テーマ Ⅱ

(1) 漏洩ガス拡散解析シミュレーションシステムの概要

 本システムは、石油貯蔵施設や化学プラントなどで可燃ガスや有毒ガスなどの漏洩時に、気象観測計から収集した風向風速データをもとに化学物質拡散解析シミュレーションを行い、その結果を地理情報システム(GIS)上に重畳・可視化します。この情報を緊急対応を行う消防隊員や事業者に提供する事により緊急対応をより確実なものとし、地域住民の安全確保に寄与する事を目的としています。

図1拡散解析シミュレーションシステムの構成

(2) システムの構成

 ・ポータブル気象観測計

 ポータブル気象観測計を用いて発災場所近辺の適切な場所で気象情報を収集します。本システムは気象情報を収集するための各種センサー類と、得られたデータから風向・風速等の気象データに変換するマイクロサーバーで構成されています。

・データ通信システム

 データー通信システムとして「有線方式」、「SIMカードを用いた携帯電話回線を活用する方式」、Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)から、目的に合致した方式を選択することができます。また、必要に応じてクラウドストレージを活用する事も出来ます。

 ・影響解析ソフトウェア

 本開発では、可燃物質や有害物質などの大気拡散を評価するため、米国環境保護庁(EPA)と米国海洋大気庁(NOAA)によって開発された、可燃物質や有害物質などの大気拡散を解析するためのソフトウェア、”ALOHA”を使用します。

図2拡散解析システムの構成要素とデータの流れ

(3)システム全体のデータ処理の流れ

 図2に、本拡散解析システムでのデータ収集、ガス拡散のシミュレーションから情報の表示の概要を示しました。以下に手順を簡単に説明します。

ⅰ)⾵向⾵速データの収集

 モバイル気象観測計を用いて発災地域での⾵向⾵速等の気象観測データを収集します。得られた情報は、気象計の設置状況に合わせて「有線で直接PCに情報を送る」、又は「無線を用いてクラウドストレージに送り、PCが情報をクラウドシステムから取り込む」方式から選択します。

ⅱ)ガス拡散のシミュレーション

 収集された気象観測データをもとに、”ALOHA”を用いて漏洩ガスの大気中での拡散シミュレーションを行います。

ⅲ)オープンソースGIS(QGIS)によるシミュレーション結果の表⽰

 独自のソフトウェアを用いて拡散シミュレーション結果を可視化し、その地域の「地理情報システム(QGIS)」の上に重畳表示します。

(4)シミュレーションのための情報入力

 図3に本システムへ情報入力を行うための画面の例を示します。ここでは石油貯蔵施設での「地震による災害」を取り上げましたので、入力項目は「タンクの種類」、「地震データ」、「環境設定(気温や風向風速など)」となっています。この内、地震データについては、サブテーマⅠで示した「地震によるタンク健全性の評価システム」の結果が活用できます。地震によって被害を受けたタンクから流出した引火性ガスの漏洩状況をALOHA自動化システムへ入力することによって、数百基あるタンク群の中から迅速に影響解析したいタンクを選択し、その影響を評価することができます。

図3情報入力画面の一例

(5)気流拡散の表示(可視化)

 全項目を入力完了後、右下の送信ボタンをクリックすることにより、ALOHAを用いた影響解析およびQGISへの結果可視化が自動的に開始され、最終的にALOHAのシミュレーション結果とGISデータを重ね合わせた地図上に影響度解析結果(輻射熱やガス濃度など)が表示されます。

図4. 気流の可視図例

 統合システムの最終的な解析結果の表示例を図4に示します。図はガス拡散シミュレーション結果をQGISに投影し、影響解析結果として駅や学校、病院が重なった箇所を抽出したテーブルを示しています。事前に、GISデータとして評価対象施設(駅や学校、病院など)の情報を入力しておくことにより、緊急時には必要な対処を効率よく行うことが可能となります。上記の解析は、石油やガス貯蔵施設のみならず、事業所内のプラント施設(蒸留施設や化学反応施設など)にも適用することができます。また、本結果をオンライン会議システム上で情報共有する事により、関係者間で迅速な情報共有をすることもできます。

(石油施設等防災研究会)

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